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【連載第13回】電力自由化がもたらす未来② -HEMSって何?-           

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hemsのイメージ画像です
第12回~第15回では「電力自由化がもたらす未来」と題して、電力自由化(電力小売全面自由化)の時代に新しく登場するテクノロジーやサービスについてご紹介します。
今回も電力自由化のカギとなる新たなテクノロジー、HEMSについてご紹介します。

1. HEMS:スマートメーターと連動して電子機器の使用状況を管理・監視

前回お話したスマートメーターは電気使用量の計測をするものでしたが、HEMSはスマートメーターと連動して、電子機器の使用状況を管理・監視するシステムです。
では、HEMSがある暮らしとはどのようなものなのでしょうか。
まずは、HEMSにデータが蓄積されることにより、電力会社などからより適切なアドバイスをもらえるようになるかもしれません。
同じような家庭構成、同じような地域の他の家庭の電力使用データと比べて「もっとこういうふうに使った方が良いですよ」「先月に比べて家電の使い方がこう変わったので、電気料金が今月は高かった。だから、ここはこうしたほうがいいですよ」といった細かいアドバイスをもらえる可能性があります。
さらに、一定以上電気を使おうとすると、自動的に家電の制御をするということが、将来的にはできるようになっていくでしょう。
こうした自動制御システムの発達によって、最終的には人間が意識的に節電しなくても機会が自動的に節電してくれるような世界になっていくことが期待されます。

2. HEMSはスマートフォンのアプリで普及する?

現在、HEMSの専用機器は20万円程度で販売されています。普及していくにはもう少し手ごろな値段になる必要があるでしょう。
希望的観測の部分もありますが、将来的には専用機器がほとんど不要になるでしょう。HEMSを利用できるようなスマートフォンのアプリなどが開発されることによってHEMSが普及するのではないかと考えています。
スマートメーターが計測したデータを個人のスマートフォンで受信することで、電力使用量が詳細に把握でき、専用アプリで自宅の家電の制御も出来るようになるようなイメージです。
いわゆる”IoT”、つまり色々なものがネットワークでつながり制御できる世界が身近になるわけです。

もしかしたら「スマートメーターは設置されたけれども、まだあまり活用できていません」という家庭も今後しばらくは多いかもしれません。
しかし、スマートフォン用の電力管理・家電管理用アプリが出てくれば、HEMS的な電力管理システムが一気に普及するでしょう。
例えば昔、音楽を聴くためにCDプレーヤーやDVDプレーヤーなどのオーディオ機器を買っていたのが、今ならスマートフォンひとつあれば音楽が聴けるわけです。
私が小さいころ、我が家にもダイニングテーブルくらいのとても大きなレコードプレーヤーがあったのを覚えています。
ラジオも同様で、昔はラジオ機器が一家に一台ありましたが、今はインターネットラジオのアプリで聞けてしまいますから、自宅でラジオを聴くためにラジオ機器を単体で買う人は減っているでしょう。
これと一緒で、最終形態としては、HEMSもアプリ化されて多くの機能がスマートフォンの中に入ってしまうようになるのではないでしょうか。

3. 様々な産業に及ぼす影響

電力自由化にともなうスマートメーターやHEMSの普及によるメリットは、様々なビジネス分野にも広がると予想されます。
運輸サービスの効率化もその1つです。宅配会社や郵便局であれば、配達先の家が電気をどれだけ使用しているかといった情報をリアルタイムで受け取れると、配達業務を今よりももっと効率化することが出来ます。
彼らにとって一番非効率的なことは、在宅しているかどうかも分からないのに、その家に足を運ばなくてはならないことです。
在宅状況をどこまでオープンにするかはいろいろ問題があるとは思いますが、その情報を宅配会社や郵便局に対して開示することで、訪問する前にその家に人がいるかどうかが分かり、運輸業界全体の効率化が図られます。
また運輸業界だけでなく、今そこに人がいるかどうかというデータをリアルタイムで提供することは、現在あるムダな行動を少しでも解消したり、防犯面に貢献したりと、今後、社会全体に置いてとても期待されていることのひとつです。
企業情報
企業名
RAUL株式会社
事業内容
  • エネルギー自由化推進事業
  • 環境経営・CSR活動支援事業
  • グリーンコンシュマー支援事業
  • ソーシャルビジネス支援事業
設立
2005年3月
URL
http://www.ra-ul.com
ライター紹介

江田健二

慶應義塾大学経済学部卒業 アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。 エネルギー/化学産業本部(リソースグループ)に所属し、電力会社のCRMプロジェクト、大手化学メーカーのSCMプロジェクト等に参画。 アクセンチュアで経験したITコンサルティング、エネルギー業界の知識を活かし、2005年にRAUL株式会社を設立。   著書 『かんたん解説!! 1時間でわかる 電力自由化 入門』

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