ビジネストレンド

【連載第12回】電力自由化がもたらす未来① – スマートメーターって何?-           

1,897 view

第12回~第15回では「電力自由化がもたらす未来」と題して、電力自由化(電力小売全面自由化)の時代に新しく登場するテクノロジーやサービスについてご紹介します。
今回は電力自由化のカギとなる新たなテクノロジー、スマートメーターについてご紹介します。

1. アナログな検診からスマートメーターへ

現在、家庭にひと月に1回電力メーターを検針しに来る担当者がいて、「今月はこれだけ電気を使いましたね」とメーターを目で見ながら電気料金を計算しています。
よく考えてみれば、これは非常にアナログな方法です。

それに対してスマートメーターとは、通信機能を持つ電力メーターのことで、電力会社と家庭の間で電力使用量のデータを通信でやり取りできる機能が備わっています。
自宅の電力使用量が、一定のタイミングで自動的に電力会社にメールで送信されるとイメージしてもらえれば分かりやすいかと思います。

電力自由化を進めている海外諸国では既にスマートメーターの普及が進んでおり、日本でもこれからの10年でスマートメーターがほぼすべての企業や家庭に導入される予定になっています。

2. スマートメーターのメリット① より効率的な節電対策が可能に

スマートメーター導入がもたらすメリットとしては様々なものがあげられますが、ここでは2つご紹介します。

1つ目のメリットとして、スマートメーターを設置すると、より効率的な節電対策を取ることが出来るようになるということが挙げられます。
これまでは1ヶ月に1回電気料金が分かるだけで、しかも検針員がやってくる日は月ごとにバラバラでした。
これではどの日にどれだけ電気を使ったのかが分かりませんし、そもそもどの機器・どの家電が電気をどれだけ使っているのかが全く分かりませんでした。
そのような状況では、節電しようにも「エアコンをつけるのをやめよう」など単純な節電対策しかとることが出来ませんし、どの行動がどの程度の節電に繋がっているのかもよくわかりませんでした。
ところがこれからは、「この家電はこの時間にどうもたくさん電気を使っているようだ」など、毎日・毎時間、電力消費の状況を詳しく把握できるようになります。
こうした情報からより意味のある節電を行うことが出来るはずです。

3. スマートメーターのメリット② 通信データを利用した様々な取り組み・サービスの誕生

もう1つご紹介するメリットとして、膨大な通信データを活かして様々な取り組みやサービスが生まれるだろうという事が挙げられます。
スマートメーターが設置されることによって生み出される情報量は、これまでは想像のつかないほど膨大なものです。
1ヶ月に1回のみ電気使用データを取っていた従来の方法を1だとすると、例えば30分に1回データを取得したとして、1日に48回。
それが月30日であれば1ヶ月に1440のデータが集まります。
つまりこれまでの1440倍集まるということです。
電力会社は、これだけのデータを何千世帯・何万世帯からも集めることが出来ることになります。
電力会社はこのデータを元に様々な分析を行い、発電施設の建設計画や料金プランの検討など、様々な取り組みに活かすことができるようになります。
これがスマートメーターが電力自由化の時代のカギを握るといわれるゆえんの1つです。
また、電力販売に直接は関係しないようなサービスが生まれることも考えられます。
例えば高齢者の家庭の電力使用量に異変が起こった場合に通知を行う福祉サービスの展開が考えられます。
また、第14回でご紹介するデマンドレスポンス(地域の電力使用量が多いときに節電を行うとお礼がもらえるようになるというサービス)のような、リアルタイムの情報を使用したサービスも発展するかもしれません。

このように、スマートメーターは電力事業の在り方を大きく変え、全く新たなサービスを生み出すと考えられているのです。
企業情報
企業名
RAUL株式会社
事業内容
  • エネルギー自由化推進事業
  • 環境経営・CSR活動支援事業
  • グリーンコンシュマー支援事業
  • ソーシャルビジネス支援事業
設立
2005年3月
URL
http://www.ra-ul.com
ライター紹介

江田健二

慶應義塾大学経済学部卒業 アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。 エネルギー/化学産業本部(リソースグループ)に所属し、電力会社のCRMプロジェクト、大手化学メーカーのSCMプロジェクト等に参画。 アクセンチュアで経験したITコンサルティング、エネルギー業界の知識を活かし、2005年にRAUL株式会社を設立。   著書 『かんたん解説!! 1時間でわかる 電力自由化 入門』

その他のコラム

ページトップ