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【連載第20回(最終回)】「電力自由化の時代」の展望           

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これまで計19回にわたり、2016年4月から始まる電力自由化(電力小売全面自由化)についてお話してきました。
今回はその総括として、これまでの内容を簡単に振り返り、「電力自由化の時代」の展望としたいと思います。

1. 電力自由化で様々な技術やサービスが誕生する

電力自由化が始まると、これまでの固定されていた電力市場が一般に開放され、激しい競争の中で様々な技術やサービスが生まれることになります。

まず、電力会社はこれまでは考えられなかったような料金体系やサービスを提供するようになるでしょう。
これまで電力会社はその地域の世帯とはほぼ必ず契約を結ぶことが出来ましたが、これからは消費者に選ばれる会社にならなくてはならないからです。

また、この電力自由化によって他の産業でも多くの新たな技術やサービスが生まれることになるでしょう。
特に今回の電力自由化は、IT業界にとって大きなビジネスチャンスとなります。
第12回~第13回で触れたように、今後はスマートメーターによって電力使用量に関するデータが大量に通信によってやりとりされるようになるからです。

また、これまでは考えられなかったような新たなサービスの誕生も期待されています。第14回で触れた「デマンドレスポンス」がその好例だと言えるでしょう。

2. 情報セキュリティやインフラの脆弱化の可能性など、課題もある

一方、電力自由化はいいことづくめではないということもこれまで述べてきました。

例えば第16回で述べたとおり、情報セキュリティが大きな問題となるでしょう。
電力使用量に関する情報は重要な個人情報ですが、それがスマートメーターによって頻繁にやりとりされるようになると、どうしても悪用のリスクが高まってしまいます。

また、インフラの脆弱化の可能性もあります。
これまで電力会社は他社と競争をする必要がありませんでしたから、長期的な視点を持って発電施設に対する投資を行い、また、人が少ない地域にも電気を届けることを非常に重視して操業を行ってきました。
しかしこれからは他の電力会社との競争の中で生き残ることを考えなければならないため、どうしてもそのような考え方は弱まってしまうでしょう。

3. 私たちは「電力自由化の時代」にどのように臨めばよいのか

それでは、私たちはこの「電力自由化の時代」にどのように臨めばよいのでしょうか。

第1回で述べたとおり、「電力自由化の時代」はある意味「自己責任の時代」ということもできます。
世の中にたくさん存在する様々な電力会社から、どの会社を選ぶかは私たち自身に任されているのです。

適切な選択を行うためには、第10回で述べたとおり、自分の生活スタイルの見直しや確認をしたり、世の中にどのようなサービスがあるのかを探したりする、主体的な消費者であることが重要です。
これは大変なことであるように聞こえてしまうかもしれませんが、今後はこうした分析や情報収集を助けてくれるサービスが登場することが考えられるので、うまく活用すると良いでしょう。

最後に

私が電力について興味を持ったのは、15年ほど前に電力会社の仕事に携わったことがきっかけでした。
一緒に仕事をさせていただいた電力会社の方々は、日本の電力インフラを支えているということに対して高い誇りと責任感を持っていました。

今回の電力自由化は、電力業界に大きな風穴をあけるでしょう。
恩恵を受けられる消費者や新しく参入する企業はもとより、既存の電力会社にとっても長い目で見ると、大きなチャンスになるのではないかと思います。

日本の高い技術や柔軟なアイデア、培われてきたノウハウが開かれた電力業界と融合することで産業や経済が大きく飛躍する可能性があります。

この可能性をどこまで開拓していけるか?
そこに私自身も少しでも貢献できるよう、しっかりと腰を据えて、皆さんと一緒に取り組んでいきたいと思います。
企業情報
企業名
RAUL株式会社
事業内容
  • エネルギー自由化推進事業
  • 環境経営・CSR活動支援事業
  • グリーンコンシュマー支援事業
  • ソーシャルビジネス支援事業
設立
2005年3月
URL
http://www.ra-ul.com
ライター紹介

江田健二

慶應義塾大学経済学部卒業 アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。 エネルギー/化学産業本部(リソースグループ)に所属し、電力会社のCRMプロジェクト、大手化学メーカーのSCMプロジェクト等に参画。 アクセンチュアで経験したITコンサルティング、エネルギー業界の知識を活かし、2005年にRAUL株式会社を設立。   著書 『かんたん解説!! 1時間でわかる 電力自由化 入門』

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