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【連載第18回】日本の電力企業は海外に進出していけるの?           

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第17回と第18回では、電力自由化(電力小売全面自由化)後に予想される日本の電力企業の姿についてご紹介します。
今回は日本の電力会社の東南アジア諸国への進出のメリットや課題、日本の強みなどについてお話します。

1. 東南アジア諸国への進出は日本企業にとって大チャンス

前回お話した通りに日本で総合エネルギー企業が育ったら、アジアの国々に進出していくべきなのではないでしょうか。
アジアの経済成長は著しく、産業用電力を中心に非常に電気の需要が高まっており、さらに、シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシアなどのASEAN諸国や、インドなども今後自由化の波にさらされていくことが予想されています。

日本の企業がこれらのアジア諸国と協力して新しいマーケットを育てていける可能性は大いにあります。
アジア諸国の電力自由化は日本にとっても非常に望ましい事であるといえるでしょう。

2. 電力消費量の大きな伸びが予想される持つ東南アジア諸国

東南アジアは、先進国に比べると国全体の電力消費量がまだ少ないものの、今後電力消費量においては大いに伸びしろがある地域と言えます。
例えば各家庭に1台ずつテレビが入ったり、洗濯機が掃いたり、エアコンが全部の部屋に取りつけられたり、2階建ての木造の建物が5階建ての鉄筋コンクリートになってエレベーターが付いたり、照明が付いたりなど、今後急激にエネルギー消費量が増えていくことが予想されています。
あるデータによると、東南アジアのエネルギー滋養は2035年までに今よりも80%以上伸び、現在の日本のエネルギー需要と同等になると言われています。

それに対して、日本国内では人口減少や経済成長の鈍化などにより、電力需要が既にピークを過ぎているので、ともすれば「電力自由化は必要ないのでは」という議論が起こりがちです。
確かに国内マーケットだけ見るとそういう意見が出てきても不思議ではありませんが、自由化によって強い総合エネルギー企業が生まれて、これから伸びる国に進出していくことで、その国の産業の成長に貢献するとともに日本経済に貢献することが出来る可能性を秘めているのです。
さらに、日本の総合エネルギー企業が東南アジアのマーケットで存在感を示すということが、自動車メーカーや家電メーカーなどの他の日系企業も一緒にシェアを拡大可能性が高くなるということも大きなポイントです。

3. 日本企業は東南アジアで活躍できるのか?

しかし、東南アジアを魅力的に感じているのは日本企業だけではありません。
いずれヨーロッパの企業がアジアのマーケットに進出してくることでしょう。電力自由化で出遅れてしまった日本企業は、東南アジアでの競争に勝つことが出来るでしょうか。

もし日本の電力自由化がもう10年遅れていたら、日本企業はヨーロッパ企業の席巻する東南アジアのマーケットに遅れて乗り込んでいくということになっていたかもしれません。
しかし2016年に自由化が行われ、2020年ごろまでに強い総合エネルギー企業が出現し、その後何年かかけてアジアのマーケットに進出するという可能性を考えれば、今回の自由化は絶好のタイミングなのです。

日本は電力事業に関する非常に高い技術を有しています。日本は四季がはっきりしていて季節によって気温の変化が大きい国です。
また国土が南北に長いので、北海道から沖縄まで気候や気温にも多様性があり、一日の中でも気温差が大きいのが特徴です。
したがって、電力使用量にも地域や時期、時間によって大きな変化や差異があり、それに対応している日本の企業は、エネルギー供給システムだけでなく、断熱など家屋素材の質、家電にいたるまで非常にクオリティーが高いのです。

また、電力の需要と供給のバランスを取るには実は非常に難しい技術を必要とするのですが、日本には長年にわたって培われた技術やノウハウが貯まっています。
これらをITと結びつけることで、今後さらに環境とエネルギーと生活の連携を効率化、最適化していけるはずです。
そしてこの技術を磨くことによって、この分野における日本企業の技術を東南アジアのマーケットで大いに活用できるのではないでしょうか。
企業情報
企業名
RAUL株式会社
事業内容
  • エネルギー自由化推進事業
  • 環境経営・CSR活動支援事業
  • グリーンコンシュマー支援事業
  • ソーシャルビジネス支援事業
設立
2005年3月
URL
http://www.ra-ul.com
ライター紹介

江田健二

慶應義塾大学経済学部卒業 アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。 エネルギー/化学産業本部(リソースグループ)に所属し、電力会社のCRMプロジェクト、大手化学メーカーのSCMプロジェクト等に参画。 アクセンチュアで経験したITコンサルティング、エネルギー業界の知識を活かし、2005年にRAUL株式会社を設立。   著書 『かんたん解説!! 1時間でわかる 電力自由化 入門』

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