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【連載第11回】電力自由化にはどんな備えをしたらいいの?‐地方自治体編‐           

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第9回~第11回では、電力自由化(電力小売全面自由化)の時代にどのように備えるべきなのか考えていきます。
今回は最後に地方自治体がどのような準備をすればよいかについて考えます。

1. 市民・地元企業と協力して電力会社の設立を

地方自治体はこれまでも、コスト削減の一環として、複数の電力会社から電気料金の見積もりを実施する入札制度により、電力自由化を有効活用してきました。
これからもそういったコスト削減の部門は進めていくと同時に、自治体と地元の企業・市民が協力し合って、新しい電力会社を作るということを目指すのはいかがでしょうか。

2. 電力会社を作るたくさんのメリット

自治体が自分たちで電力会社を作るということは、地域活性化、地方創生にとっても大きな意味があります。例えば小さな村が自分たちで電力会社を作ることによって、その地域に新しい雇用が生まれます。
また、電力販売による利益を追求するだけではなく、地元住民の暮らしに合った料金プランを提供することによって、住みやすい街づくり、生活環境の改善にも繋がり、若者の定住や外部からの移住を促進したり、子育て支援が出来たりということが考えられます。

発電の方法も、その地域の環境や特性を生かしたものにすることができます。
日照時間の長い地域であれば太陽光発電を、水資源が豊富な地域であれば水力発電を、他にも風力や波力発電、地熱発電、バイオマス発電など、その地域の特質を活かした様々な発電設備の建設が可能になります。
具体的なイメージとしては、火山地帯や温泉地などでは自治体が主体となって民間企業と一緒に地熱発電所を造って地域住民に安く電力を提供したり、豚や牛などの家畜を飼っている農家から出た糞尿、汚物を活用してバイオマス発電を行う、ということができるでしょう。

最近、地方の市区町村が「移住者には住宅を無料で貸します」といった取り組みを行っています。
そういった地域活性化施策に「住宅も貸すし、地元のこの電力会社から買えば電気料金も安いですよ。しかも、農業が暇なときは希望すれば電力会社で働けます」といった形でプラスすれば、地域経済活性化の促進に貢献できます。
地方自治体による電力会社の設立・経営は、簡単に言えば、お金を地域の中で回すことが出来るようになる、という非常に大きいメリットがあるのです。

3. 動き始めた日本の自治体の例

実際に、電力自由化を新たなチャンスととらえ、地域活性化の可能性を探る動きが自治体などでも活発になりつつあります。ここではいくつか例をご紹介します。

鳥取県鳥取市は、地域エネルギー事業「一般財団法人鳥取環境エネルギーアライアンス」を立ち上げました。
これは電力の小売りを担当する「鳥取新電力」、再生可能エネルギー発電施設の開発・電力供給を担当する「鳥取電源開発」、熱電供給事業・EMS・ESCO事業を担当する「鳥取熱電供給」の3部門を設置し、エネルギーの地産地消を推進する計画です。

また、人口約4万人の福岡県みやま市は電力会社「みやまスマートエネルギー」を立ち上げました。
これは市内の太陽光発電による余剰電力の買取と販売を行います。目指すのは「地域で使う電力を地域で賄う」、つまり地産地消です。
また、一人暮らしの年輩の方などについては、電気の使い方で異変を察知すると家族に連絡が行くなど福祉サービス展開も検討され、将来的に4割の市民が利用する計画を立てています。

このように、電力自由化を新たなチャンスととらえ、地域活性化の可能性を探る動きが自治体などでも活発になりつつあるのです。
企業情報
企業名
RAUL株式会社
事業内容
  • エネルギー自由化推進事業
  • 環境経営・CSR活動支援事業
  • グリーンコンシュマー支援事業
  • ソーシャルビジネス支援事業
設立
2005年3月
URL
http://www.ra-ul.com
ライター紹介

江田健二

慶應義塾大学経済学部卒業 アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。 エネルギー/化学産業本部(リソースグループ)に所属し、電力会社のCRMプロジェクト、大手化学メーカーのSCMプロジェクト等に参画。 アクセンチュアで経験したITコンサルティング、エネルギー業界の知識を活かし、2005年にRAUL株式会社を設立。   著書 『かんたん解説!! 1時間でわかる 電力自由化 入門』

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