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【連載第7回】電力自由化のメリットとデメリットは何?           

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連載第1回から前回までは、電力自由化(電力小売全面自由化)によって何が起こるのかを述べてきました。
今回はここで一度、電力自由化のメリットとデメリットを整理してみましょう。

1. メリット:豊富な選択肢とビジネスチャンスの広がり

メリットの1つ目は、これまでも何度かお話しているように、消費者側に豊富な選択肢が生まれるということです。
これまで電力会社はお客さんがどういう生活スタイルや思考を持っていて、どんなふうに電気を使いたいか、ということをあまり考える必要がありませんでした。
しかし今後は、既存の電力会社も新しく参入する電力会社も、かなり顧客目線に立ったサービスを提供していく必要が出てきます。
消費者は、そうした顧客目線に立ったサービスの中から、自分の志向に合ったものを選べるようになるのです。
例えば自分の生活スタイルに合ったお得な料金プランを選択することもできますし、あるいは太陽光発電による電気のみを購入するプランを選ぶこともできるようになるかもしれません。
消費者自身がそれぞれの基準で会社やプランを選ぶことが出来るようになる、つまり消費者が積極的、主体的に意思表示ができる時代になるというわけです。
メリットの2つ目は、企業にとって非常に大きなビジネスチャンスが生まれるという点です。
全体で7.5兆から8兆円という大きな電力市場に、今までは参入できなかった企業も入ってきていいですよ、ということになります。
これは新しいビジネスチャンスを狙っている企業にとっては非常に嬉しい事です。
特にIT業界にとって、今回の電力自由化は非常に大きなチャンスになると考えられています。
例えば電力会社も他分野からの新規参入企業も、今後はみなITを駆使して顧客のニーズを調べ、新しいサービスを提供する、といったことをいやがおうにもしていかなければなりません。
そこでIT業界には様々なニーズが発生してくるでしょう。特に多くの顧客とつながりがある会社や、顧客データの分析を得意としている会社には、大きなビジネスチャンスが広がっていくはずです。

2. デメリット:投資控えや会社の倒産?

次に、電力自由化におけるデメリットについて考えてみましょう。
デメリットの1つは、電力会社がこれまでのような発電所などへの長期的な投資を控えるようになるのではないかということです。
電力自由化によって電力会社同士の競争が激しくなると、電力会社はこれまで以上に利益を上げ続けることを重視せざるをえなくなります。
その結果、どうしても目の前の利益を追求することになってしまい、発電所などへの長期的で大規模な投資を控えてしまう可能性があるのです。
このように電力会社が投資を控えると、日本の電力のインフラ自体が脆弱になってしまったり、もうけの少ない過疎地や離島における生活環境の維持がなおざりになってしまったりする可能性があります。
もう1つのデメリットとして、倒産する電力会社が数多く出てくる可能性があることがあげられます。
これは海外で実際に起こっていることなのですが、例えばある企業が「わが社は、今までの半額で電気を提供します」と言って新規参入してきて、一気に顧客を獲得します。
ところが実際には顧客対応などの作業が追い付かなかったり、資金繰りが追い付かなかったりして、結局「すみません、今月で電気事業から撤退します」ということになってしまうのです。
その結果、その会社と契約していた個人や企業は大きなダメージを受けてしまう可能性があります。
今後は消費者も自分でより良い電力会社を選択する目を養っていく必要があるのです。
企業情報
企業名
RAUL株式会社
事業内容
  • エネルギー自由化推進事業
  • 環境経営・CSR活動支援事業
  • グリーンコンシュマー支援事業
  • ソーシャルビジネス支援事業
設立
2005年3月
URL
http://www.ra-ul.com
ライター紹介

江田健二

慶應義塾大学経済学部卒業 アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。 エネルギー/化学産業本部(リソースグループ)に所属し、電力会社のCRMプロジェクト、大手化学メーカーのSCMプロジェクト等に参画。 アクセンチュアで経験したITコンサルティング、エネルギー業界の知識を活かし、2005年にRAUL株式会社を設立。   著書 『かんたん解説!! 1時間でわかる 電力自由化 入門』

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