【連載第5回】今まで電力自由化を進めてこなかったのは問題なの?なぜ今自由化を進めるの?
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それではなぜ日本は今まで電力自由化を進めてこなかったのでしょうか?
なぜこのタイミングで自由化を進めるのでしょうか?
こうした疑問について考えていきましょう。
1. まずは電力供給の安定を目指した日本
これは欧米諸国に比べるとかなり遅いタイミングであると言えますが、これまで電力自由化をあまり進めてこなかった日本の政策が問題だったのかというと、必ずしもそうとは言えません。
第1回でお話しした通り、現在のような電力事業の体制が作られたのは敗戦直後のほとんど何もない時期であり、そこには「これからの日本は、国を挙げて産業を育てていかなくてはならない」という国家政策がありました。
そうした方針から作られた電力の地域独裁体制は、産業を育てるにはある意味非常に良いものでした。
復興を進めて産業を育てようとするときには、経済や産業の基盤となるエネルギー、特に電力が安定的に供給されるということは非常に重要です。
そして、電力会社同士の競争がなく、各地域の電力会社が自分のエリアの電力供給に集中できる地域独占体制は、電力の安定供給にぴったりだったのです。
実際に、この電力の安定供給のおかげで、トヨタやホンダなどの自動車産業、鉄鋼産業、そしてパナソニックやソニーに代表される家電産業など、様々な分野の企業が安心して工場で製品を製造することができました。
2. 世界市場で戦っていくため自由化へ
現在の世界経済はグローバル化が進んでいます。例えばトヨタの自動車は日本だけではなく、アメリカやアジアなど世界各国の工場で生産され、販売されています。ホンダや日産などの国内のライバル企業だけでなく、メルセデス・ベンツやBMWなどの海外企業とも戦っていかなくてはならない時代になっています。
その中で、日本企業がこの戦いに勝ち残っていくためには、「品質の良い製品を造っていればよい」という考え方から抜け出して、今までにはなかった革新的な技術やサービスを生み出す力をつけることが求められるようになりました。
もちろん経済や産業の発展にとっては、電力を安定的に供給することが引き続き重要です。ですが、自由化することによって、アメリカのように様々な異業種の企業が電力事業に参入するチャンスが増え、それまでにない発想や交流が生まれ、新しい製品やサービスが開発される。それによって、経済全体が活性化することが重要なのではないか、という考え方が日本でも広がってきたのです。
例えば、かつて電電公社が独占していた電話事業が民営化されたことで、携帯電話が普及し、スマートフォンが出てきました。そしてインターネットの発達と相まって、今では海外の友達とFacebookやLINEを使って気軽に会話できるようになりました。これは通信産業の大変革です。
これと同様に、電力産業においても、8兆円近くもあるマーケットを解放することによって何か新しいことをやってみよう、と次々と企業が参入してくるでしょう。そこでお互いが刺激し合うことで、新しい技術やサービスが生まれ、電力産業全体で多様な製品やサービスが生まれることが期待されているのです。
3. 今までのシステムを続けるメリットは小さくなってしまった
昔は発電の際に大規模な火力発電所や水力発電所などが必要で、大手電力会社でないとそれらを造れないという事情がありました。
しかし、最近では太陽光発電や風力発電、バイオ燃料などを使った比較的小規模な発電設備が増えてきています。さらに、蓄電の技術やそれをコントロールするITもどんどん発達してきました。
こうした事情から、大きな電力会社が大きな発電施設を造る必要性が小さくなりました。むしろ、多くの小さな発電システムを作ってその電気を融通し合った方が、おもしろい発電の技術ができたりするのではないか、という考え方が広がってきたのです。こうして国も産業界も、今このタイミングで自由化した方が日本にとって良いのではないか、と考えるに至ったのです。
企業名 |
RAUL株式会社 |
---|---|
事業内容 |
|
設立 |
2005年3月 |
URL |
http://www.ra-ul.com |
江田健二
慶應義塾大学経済学部卒業 アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。 エネルギー/化学産業本部(リソースグループ)に所属し、電力会社のCRMプロジェクト、大手化学メーカーのSCMプロジェクト等に参画。 アクセンチュアで経験したITコンサルティング、エネルギー業界の知識を活かし、2005年にRAUL株式会社を設立。 著書 『かんたん解説!! 1時間でわかる 電力自由化 入門』
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