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【連載第16回】電力自由化、セキュリティは問題ないの?           

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電力自由化(電力小売全面自由化)が始まると、電力使用に関するデータの通信によってさまざまなサービスが行われることが予想されます。ですが、
そのデータのやり取りにセキュリティ上の問題はないのでしょうか?
今回はセキュリティについて考えてみましょう。

1. 情報のセキュリティが大きな課題

実は、電力自由化の主な課題としてよくあげられるのが、情報セキュリティの問題なのです。
第12回~第15回でご紹介した通り、電力自由化の進展に伴って、電力の使用状況に関するデータが通信でやりとりされ、その通信を活かしたサービスが展開されることが予想されます。
ですが、電力の使用状況に関する情報は重要な個人情報です。
この情報をしっかりと保護するための技術や仕組みが今求められています。

2. 電力の使用状況に関する情報は重要な個人情報

電力利用状況の詳細なデータ収集によって、各世帯の電気の使い方や、いつ留守にしているかなどといった非常に細かい生活情報がデジタルデータとして残ります。
もしそうした情報が誤って漏洩したり、電力会社のデータベースがハッキングされたりして、その会社の顧客の生活情報が全て明るみに出てしまうといった危険性もあります。
そうした情報が漏えいした場合の影響は大きく、個人のクレジットカードでの買い物情報が漏えいした場合などと同様に生活実態を他人に把握されてしまします。
電力会社には相当量の電力情報が蓄積されていきますから、電力会社の顧客情報が漏えいしてしまうことは、携帯電話会社がユーザーの通話情報を外部に漏らしてしまうような事態に近いことになると思います。
価格の安い電力会社と契約して、1年後その会社が倒産してしまったとします。そうすると1年分の顧客の電気利用データが知らない場所で使われていた、といったことが起こるかもしれません。

電力自由化に伴い、こうした情報セキュリティ問題は確実に起こると思います。スマートメーターが導入されることによって、今その家に人が在宅しているか留守化が分かりますし、その家の特性、例えば土日は全然電気を使っていないから家を空けているとか、ある月から電力使用量が大幅に増えたりしたことで「家族が増えた」などと情報も分かってしまいます。

デジタル化には、必ずこういったリスクがつきまといます。
検針員が検針して、その場で明細書が印刷され、家庭のポストに入れられる、といったこれまでの仕組みでは、そんなリスクはありませんでした。

3. 急がれるセキュリティ体制の構築

インターネットが生まれた事によってインターネットセキュリティの概念ができたように、電気に関しても今後どんどん消費者データが蓄積されて来れば「電気情報セキュリティ」といった概念が生まれてくるはずです。

電力会社のデータセキュリティ体制については、今後おそらくなんらかの基準が定められるでしょう。
電力会社が一定レベルの顧客管理体制、情報管理体制を備えているかどうかを国が審査するのです。
スマートメーターを設置する際も、電力会社は顧客に対して、どんなデータをどれだけ収集できるものであるかをきちんと説明していくべきでしょう。
情報セキュリティの問題は今後確実に出てくるでしょうから、もし新たに電力事業を始めるのであれば、各企業はその点に関してもしっかり対策しておかなくてはなりません。

また、こうしたデータの流出・漏洩を防ぐためのビジネスも出てくるでしょう。
トレンドマイクロなど、インターネット用のセキュリティ関連製品・サービスの販売会社などにとってはビジネスのチャンスが広がることになります。

 
企業情報
企業名
RAUL株式会社
事業内容
  • エネルギー自由化推進事業
  • 環境経営・CSR活動支援事業
  • グリーンコンシュマー支援事業
  • ソーシャルビジネス支援事業
設立
2005年3月
URL
http://www.ra-ul.com
ライター紹介

江田健二

慶應義塾大学経済学部卒業 アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。 エネルギー/化学産業本部(リソースグループ)に所属し、電力会社のCRMプロジェクト、大手化学メーカーのSCMプロジェクト等に参画。 アクセンチュアで経験したITコンサルティング、エネルギー業界の知識を活かし、2005年にRAUL株式会社を設立。   著書 『かんたん解説!! 1時間でわかる 電力自由化 入門』

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