リスク管理

特許と経営の関わり(その2)           

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前回は、他人の特許が自社のビジネスに及ぼすリスクについて振り返ってみました。今回は逆に、自社の特許によって得られるメリットについて確認してみようと思います。

市場をコントロールすることができる

特許権を取得することによって、自社だけがその発明をビジネスとして実施でき、他社はその市場に参入できない状態を創り出すことができます。自社だけで市場を独占することができるわけですから、大きな利益に結びつけることができるでしょう。

逆に他社の力を借りることによって、大きな利益につなげることも可能になります。例えば他社の営業力が自社よりも優れている場合を考えてみます。自社で販売すると100個しか売れませんが他社では1,000個売れるような状況ですと、自社の営業力を強化するよりは、他社にライセンスを与えて販売数を増やす方が大きな利益が得られる可能性があります。

つまり、自社で独占的に行うにしても他社と一緒に行うにしても、選択する権利は特許権を持つものが握っている訳ですから、自社の意向によって市場をコントロールすることができるのです。

技術力の高さをアピールすることができる

多くの企業では、自社の技術力は他社よりも優れているとアピールしています。技術力の高さを示す一つとして技術の独創性が挙げられると思いますが、特許権を取得しているということは、国がその技術に関する発明には独創性があることを認めているということになります。つまり、特許を取得していることによって自社の技術力の高さが客観的に証明されていることになります。技術力が高いことは自社のブランド力を高めますので、顧客に訴える一つの大きな武器になるといえるでしょう。

特許を保有する中小企業は、持たない企業に対して営業利益が3倍以上

このように特許権を取得することによって様々なメリットが得られますが、特許権を保有する企業と持たない企業との営業利益の違いについて示したデータが公表されています。特許庁が発行する特許行政年次報告書2014年版によれば、「特許を保有している中小企業は、保有していない企業に比べて、従業員一人当たり営業利益が3倍以上も高い」ことが示されています。このデータからも、特許権を取得して活用することは自社のビジネスにとって大きな武器になることが裏付けられていると思います。
ライター紹介

そらまめ総合特許事務所 代表弁理士 上村欣浩(かみむら よしひろ)

家電メーカで設計開発、特許事務所で国内海外の特許業務を経験した後、さいたま市浦和区に「そらまめ総合特許事務所」を開設。機械系の特許業務を中心として、知的財産に関する様々なご相談に応じています。
web : http://www.soramamepat.jp

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