企業力・経営力

“経費削減”によくある落とし穴           

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企業力・経営力 ,

2015年10月01日

企業が利益を上げようと思ったら、売上を上げるか、経費を削るかの2つです。しかし売上は、さまざまな条件が重なって、簡単なことではありません。一方、経費の削減は、企業の意志で簡単に手を付けることができます。そこで手っ取り早く経費削減となるわけですが、“経費削減”と言ってもただ単に削れば良いと言うものではありません。もちろん無駄が多くてお金が掛かり過ぎると言うのであれば、それは明らかに削るべきです。しかし、削り過ぎて却って結果を悪くしてしまったのでは、元もこうもありません。

過去に、あるスーパーでこんなことがありました。

まだスーパーに“惣菜”が定着していなかった頃のことです。そのスーパーでは、まず揚げ物を始めることにしました。油を吟味したり、温度調整をしたり、いろいろ研究を重ねて売り始めました。

揚げ物は、味が良いとお客の評判も上々で、担当者も一生懸命働きました。その結果、売上げも予想以上に上がりました。ところが、精算してみると思ったよりも利益が出てきません。苦労の割に経費が嵩んだために利益が出てこなかったのです。

店長は、折角惣菜を始めた意味がないと考え、経費を削ることを考えました。

そこで経費の分析をしてみると、もっとも大きな割合を占めているのが油であることが解りました。早速、使っていた油はそのままに、揚げ物の回数を増やすことにしました。これまでの1.5倍の商品を揚げれば、油の経費は25%削減できると考えたのです。

ところが、あれだけ評判を得て、馴染みのお客も付いてきたのに、お客はどんどん減っていきました。惣菜だけでなく、店の売上げまで減っていきました。惣菜を買いに来てくれたお客が、他の店に移ってしまったのです。もちろん利益も減りました。原因は、油の使い過ぎにありました。油の使い回しで惣菜の味が落ちていたのです。折角、お客が増えたのに経費を削ったことが、結果を悪くしてしまったのです。

ここには大きな教訓が2つあります。

1つは、惣菜の位置づけです。スーパー自体の客数を増やすためであれば、たとえ利益が少なくとも意味はあったのです。もう一つは、味の基準です。揚げ物を扱う場合、油の使用には限度があります。使えば使うほど味は落ちるのです。どこまでが、お客の許容範囲なのかをしっかりと見極める必要がありました。数字だけの計算で経費を削減してしまうことの危険性がここには潜んでいたのです。

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