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【連載第3回】アメリカでは既に電力自由化が進んでいるって本当?アメリカではどんなことが起こっているの?           

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アメリカやヨーロッパ諸国では、電力自由化が既に社会に浸透しています。
電力自由化の「先輩」であるアメリカやヨーロッパ諸国の経験を学び、日本の電力事業の将来を想像してみましょう。
今回はアメリカ、次回はヨーロッパ諸国における電力自由化についてご紹介します。

1. アメリカとヨーロッパ諸国は電力自由化の「先輩」

これまでもお話してきたとおり、日本では2016年4月から電力自由化(電力小売完全自由化)が始まります。
しかし、アメリカやヨーロッパ諸国ではかなり前に電力自由化を始めており、電力自由化によって生まれる新たな考え方やサービスが社会に浸透しています。

今回と次回で電力自由化の「先輩」であるアメリカやヨーロッパ諸国がどのような経験をしてきたのかを学び、電力自由化の時代に突入した日本ではどのような社会が生まれるのかを想像してみましょう。
今回はアメリカ、次回はヨーロッパ諸国における電力自由化についてご紹介します。

2. 電力自由化はアメリカの経済や産業を大きく変えた

アメリカでは日本より10年ほど早い時期から電力自由化が行われています。
アメリカの特色は州ごとで独自に自由化が実施されていることです。
もっとも自由化が進んでいる州の1つはテキサス州ですが、これはテキサス出身で共和党のブッシュ大統領(当時)が積極的に自由化を促進したためです。
共和党が強い州は現在でも自由化が進んでいる傾向にあります。

電力自由化はアメリカの経済や産業に大きな活力を与えました。現在はアメリカ全体の約3割の州で自由化が進んでおり、全米で電力会社が3000社ほど存在するという、激烈な競争が生まれています。
この競争に打ち勝つべく、自由化が盛んな州では消費者にとって魅力的な多様な料金プランやサービスが生まれています。
また、自由化に伴って、電力の消費データを活用した様々なIT企業が生まれています。
例えば電力消費データを分析するアプリを開発するなど、様々なベンチャー企業が電力消費データを使って新しいビジネスを展開しようとしのぎを削っています。

一方、アメリカの電力自由化はいいことばかりであったとは言えません。
各州で独自に電力自由化を進めているということは、国全体として電力事業の足並みが揃っていないことを意味します。
その結果、電力事業がやや複雑になってしまっているのです。例えば、テキサス州からどこか別の州に引っ越したとしたら、その州で新しい契約をし直す必要があったり、希望する電力会社のサービスが受けられなかったり、といったことが起こってしまうのです。

3. アメリカの電力事業が日本の電力事業のライバルに?

日本が電力自由化の時代に突入するに当たっては、アメリカの電力事業を無視することはできません。
電力自由化のおかげで急激に発展したアメリカの電力事業が、日本の電力自由化に伴い、日本の電力事業市場に進出しようとしているからです。
日本の電力業者にとって、アメリカは電力自由化の「先輩」でもありますが、これから生き残りをかけて戦わなければならない「ライバル」でもあるのです。
企業情報
企業名
RAUL株式会社
事業内容
  • エネルギー自由化推進事業
  • 環境経営・CSR活動支援事業
  • グリーンコンシュマー支援事業
  • ソーシャルビジネス支援事業
設立
2005年3月
URL
http://www.ra-ul.com
ライター紹介

江田健二

慶應義塾大学経済学部卒業 アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。 エネルギー/化学産業本部(リソースグループ)に所属し、電力会社のCRMプロジェクト、大手化学メーカーのSCMプロジェクト等に参画。 アクセンチュアで経験したITコンサルティング、エネルギー業界の知識を活かし、2005年にRAUL株式会社を設立。   著書 『かんたん解説!! 1時間でわかる 電力自由化 入門』

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